II V

才能発掘プロジェクト IIV クリエーターアワード

コンテスト概要

【タイトル】

Chapter Zero

【テーマ】

バーチャルYouTuber
「アメノセイの過去にまつわる×××」
記憶喪失系バーチャルYouTuber・
アメノセイの失われた過去を
想起させる作品をジャンルを問わず、
広く募集しました。

【募集期間】

2018年12月19日(水)~ 2019年3月25日(月)

受賞作品

小説部門

最優秀賞&小説部門賞
『あめのおかげ』 粗目雨
【作品紹介】

馬車と蒸気機関の音が響く街――
変形生物の“僕”は姿を自在に変えてお客様の「採寸」をする服屋「雨の青」の店長だ。
驚かれることもあるけど、平和な毎日だ。
そんな僕の中には彼――「アオ君」が生きている、今もこれからもずっと……。

【受賞者コメント】

この度は、拙作『あめのおかげ』を最優秀賞に
選出して頂き有難う御座います。
これまで、仕事上で自身の疑問や提案を切り捨て
妥協せざるを得ない場面が有った時、
己の感覚が間違っているのではと考えが過ぎることもありましたが、
表現手段にも内容にも高い自由度があったこのコンペで結果を頂けたことが、
今後表現をしていく上で大きな励みとなると感じます。
改めまして応募の機会を与えてくださった運営関係者の皆様、本当に有難う御座いました。
そんな僕の中には彼――「アオ君」が生きている、今もこれからもずっと……。

【審査員コメント】
時雨沢恵一
小説(文章)という表現方法を最大限に生かした、とても綺麗な作品でした。雨で形が分かる流れからの、『あめの“せい”』を捻っての『あめの“おかげ”』というタイトルセンス、素晴らしかったです。脱帽。
築地俊彦
非常に手堅い小説です。自分から見た他者の動きと自身の気持ち、秘密といった、一人称だからこそ書き込めるシーンをきちんと活かしているところが優れていました。これをオープニングにしてもいけると思うので、次はもっと長い小説を読ませてください。
田口仙年堂
面白い!
設定も話も今まで見たことがない才能を感じる!
ただ絶対にラノベの範疇では活かせない!
童話とか児童文学とかそういう世界ならいける!
三雲岳斗
完成度については、候補作の中でも一番でした。独特の雰囲気があり、設定の斬新さ、キャラクターの魅力ともに高い水準でまとまった作品だと思います。作中を通じて感じられる優しい雰囲気がとても好印象でした。
成田良悟
一見するとアメノセイの前世であると想像できるキャラクターは脇役となるのですが、敢えてドッペルゲンガー的な特異能力を持ったキャラクターの視点でその人物との思い出を語らせる事で、より鮮烈に『アメノセイの前身となるものがどのような存在であったか』という点が強く浮き彫りになっており、非常に爽やかな読後感でした。店の常連や人形の少女など、少ない登場シーンのキャラクター達も味があり、そうした周囲のキャラクター達の濃さの中で敢えて透明なキャラクターであるアオを浮き彫りにしたのは素晴らしい技術だと思います。

イラスト部門

イラスト部門賞
『Mary : Birth』メアリー・バース 赤薄 紅
【作品紹介】

玉座に座る王女のメアとその兄セイ。
汚れ仕事をするセイは実は存在せず、
その事実にショックを受けたメアが記憶をなくすという裏設定があります。

【受賞者コメント】

はじめまして、赤薄 紅(あかうす こう)です。
この度は「イラスト部門賞」をいただきとても光栄に思っています。
「まさか自分がっ!?」と驚いているなか、
やっと「嬉しい!」と
実感が湧いてきたところです。人生捨てたものじゃないですね!
イラストは、アメノセイくんちゃんの
「過去の幸せと絶望」をテーマに描きました。
兄妹ものです!まだまだ未熟者ではありますが、今後もさらに成長していけるように
精進していきたいと思います。
あらためて、今回は受賞させていただきありがとうございました。

【審査員コメント】
黒星紅白
ストーリー性がギュッと詰まったところが非常に良いです。女の子の頭に手をやる優しさと、その表情のギャップが二人の関係性を感じさせます。光と影をドラマチックにデザイン的に構成しているのも巧いです。

コミック部門

コミック部門賞
『イノチノアメ』 否アラズ
【作品紹介】

貧しい村を救うべく生贄として洞に捧げられた少女、そこで出会ったのは神以外のなにか。
そんな二人のボーイミーツガール。

【受賞者コメント】

この度はコミック部門の賞に選んでくださり誠に
ありがとうございます。
反省点も多く己の未熟さを痛烈に感じた作品でも
あるので、未だに賞を頂いた実感がありません。
バーチャルYouTuberにも通ずる「存在意義」
をテーマに、設定やストーリーを考えました。
少しでも自分の表現したかったものが
伝えられたのであれば幸いです。
これに胡座をかかず、恥じない創作活動を
続けていきたいと思います。

【審査員コメント】
ⅡⅤ編集部
生まれた瞬間から、生贄としての使命を与えられた巫女(アメ)が、序盤は不運な子として描かれている一方で、アメノセイと出会ってから空が晴れたように明るくなり、幸せそうに描写されているギャップが、作品全体のバランスを整えています。短いページ数の中で、ストーリー展開を二転三転させるテンポの良さが、この作品の読み応えに繋がっていると感じました。

そして、巫女(アメ)のキャラクターデザインが素敵で、この子を見ていたいがために、ページをめくれるのもマンガとしては非常に大事な要素かと思います。

動画・音楽部門部門

最優秀賞&動画・音楽部門賞
『ヘクセンヤクト』 wotaku
【作品紹介】

近未来、AIによる管理社会をテーマにキャッチーなメロディで疾走感
あふれる楽曲に仕上がっています。映像にはそんなストーリーを感じさせる演出も。
そんな二人のボーイミーツガール。

【受賞者コメント】

初めまして音楽制作をしております
wotakuと申します。
この度は私の応募した「ヘクセンヤクト」が最優秀賞を頂いたとのことで誠に光栄でございます。
アメノセイくん(ちゃん)の未来的な衣装、
そして歌が好きという特徴をヒントに
無機質なロックとディストピア風の歌詞を目指しました。
自分が作りたかった音楽を作ってこのような評価を頂けることが本当に嬉しいです。
このような機会を頂き誠にありがとうございました。

【審査員コメント】
banvox
If…ストーリーを読んだ時、自分だったらベクトルは違うけど未来的な事を書きそうと思い面白い発想だなと思いました。曲を聴いた時、クオリティ、曲の聴きやすさがすごい良かったです。編曲したくなる作品でした。

選考委員一覧

【小説】

蒼山サグ、甲田学人、時雨沢恵一、田口仙年堂、
築地俊彦、成田良悟、ハセガワケイスケ、原 雷火、
藤原 祐、三雲岳斗
(五十音順)

【イラスト】

黒星紅白

【楽曲】

banvox

アメノセイ /「ⅡⅤクリエイターアワード」PJチーム

選考委員総評

アメノセイ
生まれて(?)から一年程度で、記憶もなければ特徴もあまりないボクをテーマにたくさんの作品をいただき、本当にありがとうございます!
正直な話、ボク自身はクリエイターって感じではないので、人の作品を見て評価するというよりかは送っていただいたもの全てを見て、読んで、聴いて「すごーい!」という語彙力のない感想を言うだけでした。
ただひたすらに楽しかったです!
皆さんが作り上げた世界はどれも魅力的で、これはもう全部『ボクが失っていた記憶』ってことで良いんじゃないでしょうか?
記念すべき第1回目のテーマとして、こんな素晴らしいコンテストに関わることができて大変光栄でした。
2回目があれば今度はボクも作る側で参戦したいですね!
応募してくれた皆さん、本当にありがとうございました!!
蒼山サグ
全作品とも小説としての完成度では差が付けられないくらい素晴らしかったです。みんな上手すぎてちょっとヘコみました笑。
こうなってくるとあとはテーマに対する向き合い方で判断するしかなかったのですが、個人的には『なるほど』と膝を打たされた順に評価させて頂きました。バックストーリーとしてのオリジナリティ、世界観の深掘り。そして現在活動するアメノセイくんちゃんさんとのリンク。全て総合的に見た場合、最もバランスの取れていた作品は……?
その解答を僕の1票と致しました。
繰り返しますが、小説としての完成度はどの作品も甲乙付けがたかったです。今回選外となった方の作品もぜひまた読みたいなと強く思いました。
築地俊彦
どの作品も手堅く文章の上手な方ばかりで楽しめました。ただ全員が一人称の文体であり、ここで三人称があればそれだけで大きなアドバンテージになったのにと思います。また、これはしょうがないのですが、アメノセイ=雨から導き出されるネタがほとんどであり、雰囲気もやや沈鬱なものが多く見受けられました。そこで別のストーリーが提示できればやはり利点とったでしょう。これらを踏まえた上で、あえてMMOものに乗っかることによって個性的となった「私、セーブポイントです。」を推します。この作品は本格的な長編小説にできるだけの強度がありました。今はセーブポイントというネタ一つだけで突っ走っているので、今後は多数のガジェットを配置した、世界観の広がりを感じさせるような話にすることを期待しています。
黒星紅白
ifアメノセイイラストコンテストにご応募ありがとうございます。独自のコンセプトで自由に仕上げられたifアメノセイくんちゃん達に目を奪われました。
私自身もアメノセイと世界の関わりを改めて意識する機会になりました。

審査にあたり、制作者の強い意欲が伝わってくる作品が多く、非常に難航しました。
カチッとはまるifを…と考えると逆にぼんやりしてしまうのが、アメノセイくんちゃんという存在の面白さですので、どう選考していったらいいのか迷いました。もうよく分からなくなったので、一枚絵としてアメノセイへの思いや主張が響いてくる作品を選ばせて頂きました。
甲田学人
示し合わせたかのように感傷的なテイストの作品が並びました。「君は星の雨にのって旅をする」「『僕ら』が送る『君』への矢」はこの中では特に感情を動かす力が強く、「カラの肖像」「今日も雨を待っている」はキャラクターと切なさが強く、「私、セーブポイントです。」は荒削りですが読ませる力があったと思います。
「あめのおかげ」は私の一番好きな作品になります。奇妙な世界がよく描写され、表現に光るものを感じました。
全体としては作品のテイストが似たこともあり、評価対象としてどこに重点を置くかを少しずらすだけで順位が変わってしまうくらいには僅差であったかと思います。私は短編には端的に作家性が出ると考えています。特に題材を同じくしている今回のクリエイターアワード、特設サイトの寄稿も含め、読み比べてみるのも面白いのでは。
時雨沢恵一
流石に最終選考に残る作品、どれも完成度は十分に高かったと思います。
いろいろな方面からのアプローチは読んでいて楽しくて、むしろこちらが勉強になりました。
個人的には短くスパッとまとまっている、切れ味鋭い作品が好きで、高評価をつけさせてもらいました。
こうしたテーマを決めての選考は、小説大賞のそれとはまた違った面白さがありますね。
楽しい経験でした。
田口仙年堂
まずどの作品も非常に面白く、とても好感が持てました。アメノセイにまつわる逸話を題材にすると、ここまでバラバラな話ができあがるものなんですね。人の数だけアメノセイがあり、それらが交錯する瞬間に立ち会えた気がします。こちらも非常に良い体験をさせていただきました。ありがとうございます。今回の題材について、「アメノセイの過去。それ以外はなんでもあり」という、一見すると自由に書けそうな題材なのですが、作品のいくつかは逆に不自由さのようなものを感じました。「アメノセイ」という人格に縛られているのか、はたまた「ネット」というお題を自分で定めているのかわかりませんが、もっと自由でいいんですよ!
アメノセイくんちゃんは何にでもなれるんです!
剣豪でも赤ちゃんでもドラゴンでもCEOでも、なんだっていいんです!
みんなもっとアメノセイで遊びましょう!
楽しいですよ!
成田良悟
考えてみれば、小説賞の選考委員になるというのは初めての経験なわけですが、本当にどの作品も甲乙付けがたく、序列を付ける事の大変さを実感させて頂きました。アメノセイというテーマの特性上、記憶を無くす前の存在を『前世』として扱う作品が多く、それ故に生死や滅びを扱った作品が多かったように思えます。重いテーマになりがちな中、その重さを敢えて評価すべきか迷いましたが、最終的には『私が読んでいて楽しかったもの』を基準として選ばせて頂いた形となります。
投票制ですので、これを書いている時点ではまだどの作品が一位になるかは解りませんが、個人的には最後まで二作品の中で迷いましたが、最終的には『今現在VTuberとして存在しているアメノセイが、正しく作品の未来であったとした場合の完成度』というものを踏まえて評価させて頂きました。
逆に言うと、これからのアメノセイの活躍や方向性の変換によって私の中での作品の評価がまた変わってくるかもしれません。
どうか、アメノセイと共に育ち続けるこの素敵な作品群に祝福がありますように。
ハセガワケイスケ
正直、文章を書くことに関してライセンスなどもなくプロもアマもないと思ってます。最終選考に残った方もまさにそう。上質で『読む楽しさ』に溢れていました。「なんでこの方は世に出てないのだろう」と不思議に思うくらい。ただ「あー、おもしろかった」と終わらせるワケにもいかず、今回は選考ということで、自分なりの基準で、アメノセイという『なんでもなくて、なんにでもなれる』キャラクターを分解し、自分なりの解釈をし、それを自分の世界観で描いている。そんな『物語り』を選ばせていただきました。みなさま、ありがとうございました。
原雷火
性別どころか物理的身体の有無さえも自由にできるアメノセイは、まさに容器によって姿形を変える水のような存在ではないでしょうか。そんなアメノセイが題材なのですが「雨」や「水」を連想させる作品が多かったと感じました。自分も無理矢理乗っけてしまいましたが「雨」という要素はどうしたって使ってしまいます。そこからちょっとだけ“ひねり”を加えて、定番では終わらない新しい一面を探り出せるかという挑戦も、大切なことなのかもしれないなと感じました。(自分の書いたものを棚に上げつつ)
藤原祐
文章力が高く読みやすい作品ばかりで素晴らしかったです。また『アメノセイの過去にまつわる物語』というテーマに対し、皆さん真正面から真摯に向き合って解釈しており、各人の技量と感性を味わいながら読むことができました。
その上で、構成や世界観、キャラクター、なによりエンターテインメントとしての魅力を踏まえて総合的に審査させていただきました。当落についての悲喜交々はあるかと思いますが、最終選考に残っているという事実はあなたにとってひとつの成果です。今回のアワードをどうか今後のジャンプ台にしてください。次の作品がもっと素晴らしいものになることを期待しています。
三雲岳斗
さすがに最終選考まで残っただけあって、どの作品もそれぞれ魅力的な要素を備えていて、楽しく読ませていただきました。中でも拡張現実や同性愛といった難しいテーマを両立させた『カラの肖像』と、独自の世界観を持ち、優しい雰囲気が魅力の『あめのおかげ』を個人的に推させていただきました。また、『私、セーブポイントです。』は、エンターテインメントとして抜群の面白さで、作者の次回作をぜひ読んでみたいと感じました。

応募作全体にいえることですが、アメノセイという既存のキャラクターとリンクした企画ということで、文章の巧さや構成力だけでなく、キャラクターに親しみや魅力を感じさせる作品、あるいは希望を感じさせる作品であって欲しいと思います。たとえ悲劇的な設定であっても、結末に至る過程を工夫することで読後感を爽やかに出来るのではないかと。その意味でもったいないと感じる作品がありました。惜しかった。

なにはともあれ、素敵な作品にたくさん出会えて楽しかったです。このような機会を与えていただき、ありがとうございました。