小説部門
【作品紹介】
馬車と蒸気機関の音が響く街――
変形生物の“僕”は姿を自在に変えてお客様の「採寸」をする服屋「雨の青」の店長だ。
驚かれることもあるけど、平和な毎日だ。
そんな僕の中には彼――「アオ君」が生きている、今もこれからもずっと……。
【受賞者コメント】
この度は、拙作『あめのおかげ』を最優秀賞に
選出して頂き有難う御座います。
これまで、仕事上で自身の疑問や提案を切り捨て
妥協せざるを得ない場面が有った時、
己の感覚が間違っているのではと考えが過ぎることもありましたが、
表現手段にも内容にも高い自由度があったこのコンペで結果を頂けたことが、
今後表現をしていく上で大きな励みとなると感じます。
改めまして応募の機会を与えてくださった運営関係者の皆様、本当に有難う御座いました。
そんな僕の中には彼――「アオ君」が生きている、今もこれからもずっと……。
【審査員コメント】
- 時雨沢恵一
- 小説(文章)という表現方法を最大限に生かした、とても綺麗な作品でした。雨で形が分かる流れからの、『あめの“せい”』を捻っての『あめの“おかげ”』というタイトルセンス、素晴らしかったです。脱帽。
- 築地俊彦
- 非常に手堅い小説です。自分から見た他者の動きと自身の気持ち、秘密といった、一人称だからこそ書き込めるシーンをきちんと活かしているところが優れていました。これをオープニングにしてもいけると思うので、次はもっと長い小説を読ませてください。
- 田口仙年堂
-
面白い!
設定も話も今まで見たことがない才能を感じる!
ただ絶対にラノベの範疇では活かせない!
童話とか児童文学とかそういう世界ならいける! - 三雲岳斗
- 完成度については、候補作の中でも一番でした。独特の雰囲気があり、設定の斬新さ、キャラクターの魅力ともに高い水準でまとまった作品だと思います。作中を通じて感じられる優しい雰囲気がとても好印象でした。
- 成田良悟
- 一見するとアメノセイの前世であると想像できるキャラクターは脇役となるのですが、敢えてドッペルゲンガー的な特異能力を持ったキャラクターの視点でその人物との思い出を語らせる事で、より鮮烈に『アメノセイの前身となるものがどのような存在であったか』という点が強く浮き彫りになっており、非常に爽やかな読後感でした。店の常連や人形の少女など、少ない登場シーンのキャラクター達も味があり、そうした周囲のキャラクター達の濃さの中で敢えて透明なキャラクターであるアオを浮き彫りにしたのは素晴らしい技術だと思います。