試し読み 星空のローグ・ジャーニー

 

 プロローグ

 

 冷たい雨が降り注ぐ中、赤い髪色の少年が起き上がった。

「うぅ……ん……?」

 子どもの衣服はところどころ焼け焦げ体中泥で汚れており、これといって大きなケガはないのだが、なぜか身体中から痛みを感じていた。周囲は焼け焦げ、建物だった瓦礫には大量に銃弾の跡が残っており、明らかに争いが起こっていたことが窺える。赤と黒のまるで悪魔を模したような装飾がされたマスクをかぶった謎の兵隊、それに応戦したと思わしき警備兵、そしてなすすべもなく殺されたであろう大人や、その子どもたちなど、辺り一面に様々な死体が転がっていた。

「なん……で……?」

 周りの人間が全て死んでいること、そんな中で自分が生きていること、その両方に対して少年はそう呟いた。
「……誰か……い……ない……の?」
 少年はゆっくりと歩き出すと、すがるように周囲の瓦礫をひっくり返し、生きている人間がいないか探し始める。しかし、出てくるのは見覚えのある死体と、何者かわからない肉片だけだった。
「うっ……!」
 初めて見る死体に子どもは思わず吐きそうになってしまう。口からあふれ出そうになる何かを両手で押さえ込み、なんとか息を整える。
「そん……な……さっきまで……一緒だったのに」
 ほんの数分前まで一緒に笑い合っていた同年代の少女の無残な姿に、少年はショックを隠せないでいた。現実を受け止めきれず呆然と立ち尽くしていると、かすかな物音が彼の耳に届く。
「誰か⁉ そこにいるの⁉」
 少年が音のする方を振り返ると、そこには先ほど見かけた兵士と同じマスクをかぶった男が、こちらに銃を向けていた。
「えっ?」
 少年が驚いて固まっていると、マスクの男は容赦なく引き金を引く。少年はその瞬間、恐怖で目をつぶった。複数の発砲音が瓦礫だらけの広場に響く。
「…………?」
 だが、いつまで経っても身体は痛みを感じない。恐る恐る目を開けてみると、そこには見慣れた女性の姿があった。
「ドリィ……?」
「大丈夫かい……? アモン……」
 ドリィと呼ばれた女性は、少年に覆いかぶさるように立っていた。そっと彼女の後ろを見ると、先ほど少年に向かって銃を撃ったマスクの男が地面に倒れていた。ドリィはアモンをかばった上で、その手に持った銃でマスクの男を倒していたのだ。ようやく出会えた知り合いに少年は顔を輝かせる。
「ドリィ……僕を助けてくれ――」
 しかし、アモンはそこでドリィの胸の辺りが赤黒く染まっていることに気づく。そう、彼女はその身を犠牲にして、アモンを銃弾からかばったのだ。
「――ッ」
 致命傷を受けたため立っていられなくなったのか、ドリィは膝から崩れ落ちアモンに倒れかかる。
「ドリィ……? ねぇ……どうしたの……?」
「ごめんね……アモン……アタシはここまでみたい……」
 ドリィの声は今にも消え入りそうなほど弱々しい。なんとかしようとドリィを寝かせて傷口を手で押さえるも出血は止まらない。徐々に青くなっていく彼女の顔を見て、アモンは自身の鼓動が恐ろしいほど速くなるのを感じる。
「だ、大丈夫! こんな酷いことになっているんだ。きっと……助けが来てるはず……だから!」
 そう言いながら周囲を見渡すも、周りには瓦礫と死体しかない。もちろんドリィのケガを何とかできるような道具が見つかるはずもなく、彼女が助からないことは誰の目から見ても明らかであった。だがそれでも現実を信じたくない子どもは、ほんの少しの奇跡を信じて祈るように彼女の手を握りしめる。そして、ドリィも自分の命の終わりがすぐそこまで来ていることに気づいていた。観念するように一度目を閉じると、ゆっくり口を開ける。
「アモン……これを……」
「……え? ……これってドリィが大切にしてた……」
 ドリィは震える手で禍々しいデザインの銃をアモンに渡す。
「これは……『ジラーニイ』……きっとこれから一人で生きていくアンタの助けになるはずよ」
 まるでこれから死ぬことが決まっているかのような言い方をするドリィに、アモンは泣き縋った。
「一人で生きてくって……何言ってんだよ! これからもずっと一緒だって――」
 だが、彼女の優しく儚い笑顔を見た瞬間、アモンは次がドリィとの最後の会話になることを直感した。ドリィに言いたいことも、話さなければいけないことも、アモンにはたくさんあったがそれをぐっと抑え、聞き取れないほど小さくなってしまった彼女の声を聞くために、アモンは耳をそっと近づける。

「アモン……アンタは一生を懸けてでも……心が思う本物を手に入れなさい……それが……アタシからの最後のお願いよ……」

「心が思う……本物……?」
 ドリィの言葉の意味がわからないアモンは、静かにその言葉を繰り返す。そしてその様子を見たドリィは、優しい表情でアモンに向かって笑いかける。
「フフ……アンタには……まだそれが……何なのか……わからないかもしれない……でも……きっと……アモンなら……みつけ……ら……れ………………」
 そしてドリィの声はそこで途切れた。
「え……? ドリィ……? どうしたんだよ……」
 握りしめた手から力が消え、光の無くなったドリィの瞳はただ虚空を見つめていた。悪夢のような現実を信じることができず、アモンの頭の中が真っ白になる。
「なぁ……起きてくれよ………………母さん……!」
 きっとこれは悪い夢で、目が覚めたらまた平和な日常が戻ってくるはず、と何度も自分の頭に言い聞かせようとする。しかし、降り注ぐ雨の冷たさが、徐々にアモンの思考を現実に引き戻す。そして現実を実感してしまった彼の頭の中はゆっくりと絶望で埋めつくされていった。

「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 限界を迎えた子どもは雨音を搔き消すほどの絶叫を放つ。
 絶望で真っ黒になった頭の中で、彼女の最期の言葉が何度も反芻された。
 

 

 砂漠とギャングと美少女と……

 銀河歴 1億4505万5298年
 銀河横断エンジン「アルテマ」が開発されたことで、知的生命体は宇宙を旅する手段を手に入れた。この発明によって惑星同士の交流が始まり、様々な技術や知識が宇宙中で共有され、宇宙社会はすさまじい発展を遂げる。しかし、価値観や生態そのものが異なる生命体同士が急に手を取り合えるわけもなく、惑星差別や格差問題、宇宙社会における法の整備など様々な問題が発生し、宇宙は一気に大混乱へと陥った。そんな中、宇宙におけるルールがないのをいいことに、我先にと一心不乱に宇宙に出て自らの欲望を叶えようとする者たちが現れた。

 彼らは時に金のため、時に技術のため、時に名誉のため、時に家族のため宙を駆け、奪い、戦い、騒ぎ合った。

 そんな彼らの無法っぷりから、どこかの星で人々は彼らのことをこう呼んだ。

「ギャラクシーギャング」と……。

    ◇

「これが願いを叶える伝説の箱『レリック』かぁ……なるほど、確かに中から魔人とか神とかが出てきそうな見た目をしてやがる」
 誰の目から見てもボロい車の中で、赤髪で無造作なヘアスタイルの男が、片手でハンドルを握りつつ、もう片方の手に持った古びた箱をウットリした顔で見つめていた。砂漠には合わない白いワイシャツに、真っ黒なスーツを纏い、下半身には黒いズボン、首元にゆるゆるのネクタイを付けていた。ワイシャツの襟は立てられ、ワイシャツの襟は立てられ、大きく開いた胸元からは地肌が見えている。これらの衣類にはところどころ金属製のパーツのようなものが付けられており、機械が仕込まれているのか不規則に光っていた。生地は布のような柔らかさを持ちつつ、どこか無機物のような光沢が感じられる。見た目は20台後半だろうか、その雰囲気からまともな仕事をしている者ではないのがすぐにわかる。そんな明らかにカタギではない格好の彼を、隣に乗ったもう一人の男が諫めるように声をかける。
「……全く……よくそんな眉唾物な伝説を信じる気になれますね……アモン、見惚れてないでちゃんと前を見て運転してくださいよ。一応、僕たち今追われているんですからね?」
 隣にいる顔の整った耳の長い、緑色の髪をした男はこめかみをヒクヒクと痙攣させていた。アモンと呼ばれた男と違い、ピッチリとネクタイを締めており、同じ服装でも着こなし方に性格が出てきている。肌は白く身体の線も細いので、どこか弱々しそうなその様相は、見るものに優男という印象を与えるが、指に何個も付けられた指輪がそのイメージを壊していた。
「わかってるっつーの……ったく、こんなだだっ広い荒野でご苦労なこった。こちとらせっかく手に入れたお宝をじっくり見てたいのによ」
 アモンと呼ばれた男がめんどくさそうに言いながら後ろを振り向くと、品のなさそうなチンピラ達が、タイヤのないバイクのような乗り物で空を飛びつつ、アモン達の乗っているボロボロの車を追いかけていた。チンピラたちが乗っているのは空を飛ぶバイク「スピラディア」、車体の下部に付けられたフロートエンジンによる浮力によって宙を走るこのバイクは、銀河のどの星でも使われる一般的な乗り物である。操作するためのハンドルと、エンジンの上に取り付けられたシートで構成されており、最高時速は優に200キロを超えるという。彼らが乗っているのは大分古い中古品のようだったが、それでも余裕で車を抜き去るほどの速さを持っている。

「あの車……手配書通りだ! あいつらがターゲットで間違いねぇ!」
「そこの車止まれぇ! さもねぇとテメェらの頭に風穴が空くぜぇ!」
「ヒャッハー! こんなところで賞金首見つけられるたぁついてるぜ!」
 品のない声が大小二つの太陽に照らされる灼熱の荒野に響き渡る。全員銃らしきものを片手に持って、パァン! パァン! と車に向かって発砲している。アモン達がいるのはだだっ広い荒野の真っただ中、周りには砂と岩、たまに枯れ木や翼が4つある謎の鳥っぽい生物が見えるだけである。そんな人通りもクソもないような場所で、アモン達はカーチェイスを繰り広げていた。
「……全く……伝説のお宝をゲットすると聞いたから手伝っていたのに……手に入れたのはこんな古臭い箱一つ、しかもその結果指名手配されて一日中チンピラから追われる始末……ハァ……割に合いませんよ」
 緑髪の優男はため息をつきながら、うんざりとした目で後ろのチンピラ達を見ていた。
「エル……俺たちゃ銀河法律にも縛られないギャラクシーギャングだぞ。それがお前……同業者から指名手配されたくらいでなにグダグダ言ってんだ……そんなんじゃ無法者は名乗れないっつーの」
 アモンはそんなパートナーの嫌味を適当な答えで受け流しながら片手でハンドルを摑みつつ、空いたもう片方の手で車のドアポケットに入っていた銃を持ち、窓からチンピラたちに向かって発砲する。
「グァツ! クッソ痛ぇ!」
 後ろを振り返らずノールックで撃ったはずだが、弾丸は次々とチンピラに命中する。
「それってさっき別のチンピラからとった銃ですよね? いつもの銃使わないんですか?」
 そう言ってエルがアモンが腰に付けている銃を指さす。
「いいんだよ、あんな奴等にはもったいない。コイツは俺がギラギラするときにしか使わないって決めてんだよ」
 アモンはそう言いながら運転の片手間に次々とチンピラを撃ち抜いていく。
「ギラギラ……ね……あなたよくそれ言いますよね。未だに意味よく分かっていませんが……」
 そんな風に雑談をしていると、エルの乗っている座席側から猛スピードでチンピラが近づいてきた。アモンの銃撃に恐れをなしたのか、彼らは運転席の反対側から攻撃を仕掛けようとしている。車とスピラディアではスピードに差があるのか、あっという間にチンピラが追いつき、窓ガラス越しにエルに向かって銃を構える。
「はぁ……しつこいですねぇ……えいっ」
 エルはそれを横目に確認すると、チンピラに向かってデコピンするように指を軽くはじいた。すると……
「うぉっ⁉ な、なんだこのかぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
 突然横殴りのすさまじい突風が発生し、スピラディアに乗ったチンピラをそのまま遥か彼方へ吹き飛ばした。
「おい⁉ いったいどうしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
 後ろから追いかけてきた他のチンピラ達も、エルの指に合わせて次々と吹き飛んでいく。
「くそっ! 何だってんだ!」
 残ったチンピラ達は手に持った銃で一斉にアモン達に向かった発砲するが、エルが指を鳴らすと、まるで見えない何かに守られているかのように銃弾が不自然な動きで車を避けていった。とても自然に起こるとは思えない、不自然な光景にチンピラたちはざわつき始める。そんな彼らを横目に見ながら、エルは機嫌悪そうにぼやき始める。
「まさかそんな箱一つで指名手配までされるなんて……こんなガラクタ必死こいて手に入れようとするのアナタくらいだと思っていたんですがね……」
「だから、コイツはちゃんとしたお宝だって何度言ったからわかるんだ⁉ いいか、この箱はな、7つ集めるとどんな願いも叶えられる伝説の秘宝、この銀河を作ったのはこの箱の力とか、銀河を消滅させられる悪魔が封印されてるとか、この箱を使えばバストサイズ30センチ上げられるとか……そんな様々な伝説が語り継がれていてだな……」
「いい年こいてそんなおとぎ話を信じ続けるような人間はギャラクシーギャングとは言いません。バカというんです」
「はぁ……ったく、お前には夢もロマンもねぇのか? つまんねぇ奴だな……そんなんだからモテなくて童貞なんだぞ」
「はぁ⁉ 今ボクが童貞かどうかは関係ないですよねぇ⁉ ぶち殺しますよ⁉ それにボクはあえて童貞のままでいるんです! ボクが本気になればいつだって」
 エルがアモンに摑みかかろうとしたその時、

 ガキンッ!
 車のサイドミラーがいきなりはじけ飛んだ。

「「…………」」
 二人そろって無言で窓の外を見てみると、先ほどまで後ろにいたチンピラ達がいつの間にか車の周りを取り囲んでいた。
「テメェ……俺らをガン無視たぁいい度胸じゃねぇか……」
 男たちは空飛ぶバイクに乗ったままアモン達の車の取り囲み、怒り心頭といった様子で武器を構えている。いつの間にか数も増えており、先ほどよりも大型の銃火器を手に取っている者もいた。

「あらあら、いつの間にこんなに増えちゃって」
「全く……しぶとさといい繁殖力といい……まさしくゴキブリ並みですね」
 普通銃を持った集団に取り囲まれれば、もう少し慌てるようなものだが、この二人はまるで、日常の一コマのようにこの事態を受け入れていた。
「ではさっさと追い払いましょう。アモン、さっきサボってた分、お願いしますよ」
「はー……めんどくさ……」
 エルからのいい加減にしろという無言の圧力を感じ取ったのか、アモンは渋々了承する。まるで掃除当番を決めるかのようなテンションで賞金稼ぎの相手を決める二人、一方チンピラ達は中々アクションを起こさないアモン達にイライラしてきていた。
「オイオイ! 聞こえてんのかぁ⁉ 車を止めろっつてんだ!」
「手配書には生死は問わないって書いてんだ。さっさとぶっ殺しちまおうぜ!」
「ギャハハハ! そうだな! よし……この特性グレネードで木っ端みじんに」

 ズガァン!

 先ほどまでの銃声とは違う独特な音が轟いた途端、先頭を走っていたチンピラの動きが急に止まる。
「おい? どうした?」
「…………」
 チンピラは無言のままグラグラと力なく身体を揺らし、次の瞬間バイクごと体勢を崩し、地面に激突した。部品を周囲にまき散らしながら、スクラップになっていくバイクとともに、男は無残に地面を転がっていく。

「「「「…………」」」」」
 周りのチンピラ達は突然の出来事に呆然とする。先ほどまでのチャチな銃撃とは違う何かによって仲間が時速100キロの状態から地面に激突したのだ。間違いなく無事ではない。逃げた方がいいのでは、そんな考えが彼らの頭を一瞬よぎったがすでに遅かった。

「そんだけ頭数揃えてんだ、ちったぁ俺をギラギラさせてくれよ?」

    ◇

 先ほどまで何もなかった荒野に、数分前はバイクだったものや、それに乗っていたチンピラ達、そして彼らの荷物が転がっていた。アモンとエルは車を降り、休憩がてら倒したチンピラ達の持ち物を探っていた。
「ケッ……こんだけ大人数なんだからちったぁ値の張るもんの一つや二つ持ってるかと思ったが……どいつもコイツもシケてんな……ロクなもんがありゃしねぇ」
「そりゃあシケてるからこんなとこでチンピラなんてやってるんでしょう。そんなあるかどうかわからないお宝より食料を探してくださいよっと……はぁ……ダメですね……こっちにもない……」
 この様子だけ見るとどちらがチンピラなのかわからないだろう。エルはグゥグゥ鳴るお腹を押さえながら荷物をあさり続ける。
「ここ数日追手に追われ続けているせいで予定より大幅に時間がかかってますからね……そろそろ食べ物と水を補給しないとボクら餓死しちゃいますよ……」
「オラ! そういうわけだ! さっさとお宝出せ!」
「ボクの話聞いてました?」
「うぅ……」
 アモンは足元に転がっているチンピラの頭に足をグリグリと押しつける。チンピラ達は地面が砂でクッションになったためか、全員生きていたが、苦しそうにうめき声を上げていた。
「だとしてもよぉ……少しくらい役に立ちそうなものがあっても……おっ、いいモンいっぱい持ってるじゃねぇか」
「え⁉ もしかして食べ物見つけたんですか⁉」
 そう言ったアモンの手には砂ぼこりでよごれた手榴弾が握られていた。
「はぁ……食料が欲しいって言ってるのにそんなもの持ってどうするんですか……というか、こいつらこんな危ないもの持ってたんですね……」
「よし、次襲ってきた奴らにこれ全部投げつけて遊ぼう」
 ぎっしりと手榴弾が詰められたカバンを、そのまま雑に車の後部座席へ適当に置くアモン。そんな危険なものを雑に扱うな、と言いたげな表情をエルはしていたが、もはや疲れて言葉にする気も起きないようだった。
「はぁ……見渡す限りあるのは砂と岩、時々野生動物みたいに現れる犯罪者と組織の追手……もういい加減飽きてきますよ……」
 手を動かしつつ、うんざりとしながらぼやくエル。対するアモンは気だるげに答える。
「いやいや向こうの方をよく見ろ。そこには口から破壊光線を出して獲物を丸焦げにする『怪鳥バルデロ』が暴走族を狙ってる。そっちには闇商人がどっかの惑星から持ってきたA級危険生物『バルビュニャルヤン』、ちょうど盗賊団に襲いかかってるところだな。んでその下から出てきたのはここら辺で一番危ねぇ、音を頼りに地面からありとあらゆるものを丸呑みにしちまう『サンドワーム』、ここら辺は飽きるどころか見どころだらけで困るくらいだ」
「……見どころっていうか、見えたら死ぬような生き物しかいないじゃないですか! そういうことは早く言ってくださいよ! 早く出発しなきゃ僕たちも襲われるんじゃ⁉」
「ああ、大丈夫、大丈夫。アイツらは基本自分のテリトリーに入らなければ襲ってこねぇよ。まぁこの先サンドワームのテリトリーをちょっと通るけど、爆弾でも爆発させなきゃ襲ってこねぇよ、たぶん」
「……今さらっと重要なこと言いませんでした……?」
「ヒューヒュ、ヒュー」
 下手な口笛で誤魔化すアモン。エルは片付けをしながら何か言いたげに彼を見るも、何を言っても無駄だと思ったのか、荷物の整理をしながら片手間にエルは話を続けた。
「ここまでしてもしその箱が偽物だったりしたら許しませんからね……」
 悲観的なことを言うエルに対し、アモンは自信満々に手に取った箱を弄びながら言明する。
「心配すんな。実際、コイツを取り返すためにわざわざ追手までけしかけてるんだ。少なくともすげぇもんなのは確かなはずだぜ。それに……コイツを見て俺の魂がギラギラしてるんだ。本物に決まってるさ」
「……まぁアナタがいままでギラギラするって言ったものは全部本物のお宝でしたけど……そもそもそれってどうやって本物かどうか確かめるんですか? 宝石や美術品じゃないんですから、確かめようないと思うんですけど……」
「あと6つ集めりゃ本物かどうかわかるだろ?」
「……いつもながらアナタのノープランっぷりには本当に驚きますよ……っと」
 エルは楽観的な相棒の意見に辟易しつつ、こういった展開にもう慣れているのかそれ以上は詮索せず、荷物の整理を続けた。あらかたチンピラたちの荷物の物色が終わったため、アモン達は車に乗り込み、出発の準備を始める。そんな中、ふとエルはアモンに問いかける。
「……アモンの願いは……あの時から変わらないままですか?」
 聞き覚えのある質問に、アモンは少しだけ間を置いて笑いながら答えた。
「……そりゃあ当たり前だろ! 銀河中のお宝を手に入れる! 今も昔もお宝ほど俺の心をギラギラさせるものはこの世にないからな!」
 欲深いアモンらしいと言えばらしい回答であったが、それを聞いたエルはどこか納得いかないのか、奥歯に物が挟まったようなものの言い方をしていた。
「……ふーん……そうですか」
「なんだ? そのリアクション。何か言いたげだな」
「いえ……アナタはそういう人なんだろうと昔は疑いませんでしたが、長年一緒にいると……アナタが本当に欲しいものってお宝なのかな、と思いまして」
 エルのこの言葉に対し、アモンは少し不機嫌そうに答える。
「……はっ、何言ってんだ。今も昔も俺はお宝一筋だっつーの。そんなことお前が一番わかってんだろ?」
「……まぁいいです、そういうことにしておきましょう」
 話し終わるとアモンは先ほどまでの能天気っぷりからは考えられないような、神妙な面持ちで地面に激突して爆発したバイクを見つめていた。燃え盛る残骸を見てアモンの頭の中にはとある映像が流れる。

 心が満たされ続けた日々。
 優しく頭を撫でてくれた温かい手。
 そして……全てが崩れ去ったあの日。

 そんな幸せと虚無感が同時に襲いかかる過去を思い返し、アモンはエルにも聞こえないくらい小さくポツリと呟いた。
「そう……何やったってあの頃には戻れねぇんだからな……」
 そう言ってアモンは手に持ったレリックと呼ばれる古びた箱を手で弄ぶ。そんな珍しくしおらしい相棒の横顔に、エルはどこかもの寂しさを感じ取る。しばらくそっとしておいた方がいいかと思ったエルが黙っていると、急にアモンがくるっと振り返る。
「じゃあお前はレリックが全部集まったとしたら何を願うんだ?」
 話を切り替えるようにそう言ったアモンの表情は、いつも通りの人を小馬鹿にしたようなにやついた笑顔に戻っていた。エルは物悲しい雰囲気を払拭したいというアモンの意図を汲み取り、何事もなかったかのように同調する。
「そうですね……ボクはやっぱり宇宙中の魔導書をこの手に……」
「やっぱり童貞卒業?」
「違います」
 エルは即答で否定し、アモンはその様子を見ながらニヤニヤと笑っていた。
「というかアナタだって童貞じゃないですか!」
「んー、俺はそういうのに興味がないしなぁ……まぁ……もし俺の心をギラギラさせてくれるような女がいれば話は別だがな」
「……そんな女性この世にいるんですか?」
「いなけりゃお前と同じように一生童貞のままでもいいさ」
「……ん? ちょっと待ってください、なにさらっとボクが一生童貞って決めつけてるんですか⁉」
「さて、それじゃあ出発といきますか」
 アモンはエルの問いかけを無視し、エンジンをかけようとしたその時であった。
 ドド……ドド……ドド……。
「ん?」
 バイクや車のエンジン音のような重低音が聞こえてくる。
「アモン? 何か?」
「しっ……静かに……」
 エルには聞こえていなかったようなので、アモンは気のせいかと思ったが念のため、エンジンをかけるのをやめ、いったん車から出て耳を澄ます。
 ドドドドドド……。
 音源がこちらに近づいているのか、少しずつ音が大きくなっている。
「……何か聞こえますね」
 エルも同じ音が聞こえたようだった。少なくとも気のせいではないことがわかったので、襲撃を疑い臨戦態勢に入る二人。音に注意しながら周囲を見渡していると、後方から猛烈な土煙が上がっているのに気づく。
「ん……?」
「あれは……スピラディア……ですかね?」
 先ほどのチンピラたちが乗っていたような中古品ではない、最新型のスピラディアが凄いスピードでアモン達がいる方向に向かってきていた。
「はぁ……また追手ですかね?」
「いや……こっちに向かっているのは一台だけだし……何か様子がおかしいぞ?」
 アモンの言う通り、そのスピラディアはスピードは出ているがふらふらと揺れながら走っていた。あまりのスピードにおっかなびっくりで走っていることから、搭乗者がスピラディアに乗り慣れていないのが窺える。
「追手じゃあねぇみてぇだが……危なっかしい運転だな、なんでこんなところを一人で…」
「そこ……どい……て」
「ん?」
 その時、アモンの耳にスピラディアのエンジン音に混じって、甲高い音が届いた。
「どうかしました?」
「いや……エンジン音に混じって何か聞こえないか? なんか女の声のような……」
「あっはっは、何言ってるんですか? こんなとこに女の子がいるわけが」
「そこどいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「「えっ?」」
 聞こえた声の方角を見ると、遠目からでは砂煙でわからなかったが、ここら辺では見ない高級感のある白を基調とした、肩の部分が空いている裾の短いショートドレスを着た女の子がスピラディアに乗って走っているのが確認できた。砂ぼこりでところどころ汚れてしまっているが、それが高価なものであるのは遠目でもわかる。体格を見る限り、15歳くらいだろうか。操縦しているスピラディアと身体のサイズが合っていないのか、とても不格好に見える。
「スピラディアって……あんな女の子でも操縦できるようなものでしたっけ?」
「いや、大の大人でもGで乗りこなすの難しいはずだが……」
「お願いぃぃぃぃぃ! 曲がれないのぉぉぉぉ!」
「あれ……やばくないですか?」
 少女は必死で危険を知らせるがもうすべて遅かった。少女を乗せた鉄の塊がアモン達のすぐそこまで迫っており、アモン達とスピラディアが衝突するかと思ったその時、奇跡が起こった。
 
「「「あっ」」」

 そこら中に散らかっていた残骸と、猛スピードで走行するスピラディアが接触し、その衝撃で少女ごと空に打ち上げられてしまったのだ。さらに少女は思わずハンドルから手を放してしまい、空中に放り出される。そんな少女が飛んでいった先は……。
「おい……噓だろ?」
 その一部始終をじっと見ていたアモンの真上であった。突然のアクシデントにアモンは反応できず、ただじっと少女が落ちてくるのを見るしかなかった。直前まで命の危機を感じていたためか、少女が落ちてくるまでの間、まるでスローモーションに時間がゆっくり流れるような感覚に陥る。

 そんな永遠のような一瞬の中で、アモンは少女を見続け、その美しさに驚愕した。

 白雲のように美しく滑らかな髪、芸術品のように整った顔立ち、そして何よりも特筆すべきは宝石のように美しい赤い瞳。後ろに太陽があるためか、落ちてくる少女はまるで天から降りた天使のように見えた。これまで数多くの芸術品を手に入れてきた彼の人生の中で、もっとも美しいと感じるほどだ。アモンは人生史上最高の幸福をかみしめていたが、当然そんな時間は長くは続かない。
「「ぎゃああああああああああああああ!!」」
 二つの悲鳴が荒野に響き渡ったすぐあと、アモンが少女の下敷きとなり、地面に叩きつけられ、数メートル吹き飛ばされていった。
「あ、アモン⁉ 大丈夫ですか⁉」
 すぐさまエルがアモンの元に駆け寄っていく。少女は馬乗りになるような形でアモンの上に倒れ込んでいた。地面が砂地だったためどちらもケガはなかった。だが、下敷きになったアモンには相当な衝撃が加えられたからか、目をつぶって気絶していた。少女の方もぐったりしていたが、まぶたがぴくぴくと動いている。
「う、う……ん?」
 少女はゆっくりと目を覚まして、むくりと体を起こし寝起きのようなぼんやりとした目で周りを見渡す。
「あれ……なんともない……ん?」
 ショックで状況が理解できていないのか、しばらくボケっとしていたが自分の下にある地面ではない何かを感じ取り、ゆっくりと視線を下に向ける。
「…………やっぱりアタシくらいの美少女になると神様に愛されちゃうのね」
「えっ?」
 少女の思いがけないリアクションにエルは変な声を出した。普通こういった場面になれば、とりあえず下敷きにしてしまったアモンに謝るのが筋であろう。そうでなくとも慌てるくらいのリアクションはする。だがこの少女は一ミリも悪びれも、慌てもせず、そくさくとその場から立ち上がる。
「ごめんなさい、本当だったらちゃんとしたお礼をしたいところなんだけど……今急いでいるところだからこれで失礼するわ。まぁ……今回はアタシみたいな美少女の下敷きになれたことをご褒美と思ってちょうだい。さて……私のスピラディアは……あった、あそこね。コイツの運転があんなに難しいとは思わなかったわ……それじゃ」
 少女は何事もなかったかのように、少し離れたところに飛んで行ったスピラディアに駆け寄っていく。そんな突然現れた謎の少女をエルは慌てて引き留めようとする。
「ちょ、ちょっと待ってください⁉ アナタいったい何者なんですか⁉」
 しかし、少女はエルの話を一切聞かず、すぐさまスピラディアにまたがり、今にも出発しようとしていた。
「あ、アンタたちもすぐここから離れた方がいいわよ。いまからここにいっぱい怖い人たち来るから」
「は? いや何を言って……」
「じゃあね~」
 少女は謎のアドバイスを残し、エンジンがかかると同時にスピラディアに乗ってあっという間にその場を去ってしまった。文字通り嵐のように去っていく少女の背を見ながらエルは呆然とする。
「なんだったんですかね……今の……おっと、アモン? 大丈……ん?」
 エルはアモンに近づいてケガがないか確認しようとした、その時。
 ドドドドドドドドドドドド…………。
 先ほどよりも大きい、というよりもたくさんの音が近づいて来るのがわかる。
「なんだかイヤな予感がしますね……一度隠れた方がよさそうだ」
 エルがそう言って指を鳴らすと、アモンの周囲に突然小さな台風が発生し、その体を浮かせて近くの岩陰まで運んでいった。エルも急いで車に乗り込んでエンジンをかけ、アモンのすぐ近くに停める。そのまま岩陰から様子を窺っていると、とんでもないものがエルの目に飛び込んできた。
「な、なんですか……? あれ……?」
 土煙と共に大量のスピラディアが何十台も列を崩さずに統率された状態でアモン達のすぐ近くを通り過ぎていったのだ。走るスピラディアも先ほどのチンピラが乗っていたものとは違い、全てが黒塗りで同じ車種であった。乗っている人間の格好も荒野には合わない黒いスーツでそろえられている。これらの事柄からこちらに向かってきているのがそこら辺のゴロツキなどではなく、訓練された組織であることがわかる。あまりのスピードに土煙が物凄い勢いで舞い上がり、周囲が全く見えなくなる。土煙の嵐を抜け出し、集団の過ぎ去った方向を見ながらエルは不思議そうに言う。
「全く……何ですかあの数……とてもしつこいナンパとは思えませんが……」
 エルが先ほどの集団の後姿を訝しむように見ていると、
「うぅ……うーん……あれ……ここは……?」
「アモン? やっと目を覚ましましたか」
 先ほどまで気絶していたアモンがうめき声を出しながら目を覚ました。起き抜けでいまいち状況を把握していないようである。
「あ……エル……俺は何を……」
「大丈夫ですか? アナタは飛んできた謎の女の子の下敷きになって気絶していたんですよ」
 傍で聞くと訳の分からない状況だが、実際事実なのだから仕方ない。
「飛んできた……女の子……あっ!!」
 エルの言葉を聞いて、アモンはハッと何かに気づいたような顔をする。どうやら何が起こったのかを思い出したようだった。
「思い出しましたか? 全く……彼女は一体何者なんでしょうね? あのあとお礼もせずにすぐどっか行っちゃいますし、そのあとを謎の怖そうな集団が追っかけていきますし……まぁボク達には関係のない話です。さっさと目的地にいきま」
 そこでエルの言葉を遮るように、アモンは言葉を放った。

「惚れた……」
「………………は?」

 アモンの予想外の一言にエルは思わず固まってしまった。
「あの子の顔を見た瞬間……まるでお宝の山を見つけたみたいに……魂がギラギラした……!」
「アモン、何を言っているんですか? 顔を見たってあんな一瞬で顔なんて見れる訳が」
 その様子からヤバイスイッチが入ったことを感じたエルは全力で止めようとする。

 しかし、彼は止まらない。

「そう……あれは確かに……時間にしてみれば一瞬だったかもしれない。でも俺はあの時、確かに永遠を感じて、その中でずっと彼女を見続けていたんだ……! 白く美しい肌……それにあの宝石のように輝く目……まだ未熟みたいだがまるで芸術品のように美しい整ったバランスの身体……たまんねぇ……俺は……あの子が欲しい!」

 完全に暴走モードのスイッチが入ってしまったようだ。目をカッと見開き、視線は常に少女が逃げた方角を向いている。厄介ごとに巻き込まれたくないエルは必死で止めようとする。
「何を言っているんですかアナタは⁉ さっきまで女に興味なんかないって言ってたじゃないですか⁉」
「彼女と運命の出会いを果たすことによって俺は生まれ変わったんだ! もうさっきまでの恋を知らない俺じゃない! あの子のためなら俺は死ねる!」
「バカなこと言わないでください! ほら! あんな大量のギャングに追われてるなんて絶対訳アリですよ! あんな目に見えた地雷にツッコんだらどうなることか」
「バカかテメェは!! 食べ物と女は訳アリの方が美味しいんだよ! そんなことも知らないからお前は童貞なんだよ!」
「アナタもその味は知らないでしょ⁉」
 スイッチが入ったアモンは止まらない。すぐさまその場から立ち上がり、速攻で車の運転席に乗り込んだ。エルも慌てて助手席に乗り込む。
「おい、さっさとどうにかして追いつけ!」
 さも当然のように要求するアモン、対するエルは心底嫌そうな顔をしながら、力任せにくしゃくしゃと頭をかきながら断る姿勢を見せる。
「絶対イヤです! なんでボクがアナタの初恋に協力しなきゃいけないんですか⁉」
「俺だって一人で追いかけられんなら、お前の協力なんぞ求めずに走り出してるわ! この車じゃあ全力でスピード出してもあのスピラディアには追いつけないんだ! ガタガタ言ってないでさっさとなんとかしろ!」
「イヤです! ボクが何もしなければ、このまま安全に次の街に行けるんです! 何を言われても協力なんて」
「お前の欲しがってた伝説の巨乳エロ本『ブラックホールよりデカい! 驚異のZZZカップ! 乳が語る宇宙の真理』を買ってやる!」
「何をしているんですかアモン! しっかり摑まっててください! 速攻で追いつきますよ!」
 先ほどまで断固として行かないと言っていたが、今や絶対に追いつくという決意がエルの目に宿っている。
「手っ取り早く追いつくために風の魔法でこの車を加速させます! アナタもこれから荒事にするつもりなら準備しといてくださいよ!」
「わかってる! あいつらを粉微塵にするつもりでやったるわ!」
 エルはぬぐい切れない不安を持ちつつ、右手を開きつつ体の前へ突き出し、目をつぶって静かに呪文のようなものを唱える。

「アイレ・ビエント・エール……はぁぁっ!」

 その瞬間、エルの右手につけられた指輪がまばゆい光を放ち始めた。アモンは驚く素振りすら見せず、ただまぶしそうにする。
「いいですか、これからこの車のスピードを風の魔法を使って倍以上に跳ね上げます。ハンドルちゃんと握って舌をかまないようにしてくださいね」
「よっしゃ!!」
 軽い返事に若干イラっとしつつ、エルは車の窓を開けて後方へ手をかざし、目をつぶると彼の周りに風が纏わりつき始めた。精神を統一し、風のざわめきが収まったその時、目を開けて叫ぶ。

「吹き荒れろ! 風!」

 その言葉が発せられた瞬間、車の後方からすさまじい風が吹き始めた。
「行きますよ!」
 エルの警告と同時に風が車を後ろから押し始める。突風によって彼らの車は先ほどのスピラディア以上のスピードで走り出す。
「俺の運命の女!! 待ってろよぉぉぉぉ!」
 ドオオオオオオオオン!
 2人の無法者を乗せた車は、爆音と共にすさまじい勢いで荒野を駆け抜けていった。スピードが上がるにつれて、社内の揺れは激しさを増していき、砂と岩のみの代り映えしない風景が凄い勢いで流れていく。
「よし……見えてきた!」
 そのおかげかアモン達には出発してたった数分で、謎のスピラディア集団の背中が見えてきていた。
「ぐぐぐ……で、こっからどうするんですか?」
 エルは助手席で少ししんどそうにしながら話しかける。
「決まってんだろ、カチコミだあああああああああああ!」

 

※試し読みはここまでです。

『星空のローグ・ジャーニー』は、全国書店ほかにて3月25日より発売。
電子版も各電子書籍ストアで配信中。
定価:1540円(10%税込)

【本編はこちらからご購入ください】
Amazon
BOOK☆WALKER

『星空のローグ・ジャーニー』作品ページへ戻る